僕の戦略は間違っていたのかもしれない

今年の1月。
講演会で大手広告代理店オプトの創業者、
鉢嶺さんの言葉を聞いて胸がざわついた。
オプトは創業から8年間、なかなか事業が伸びずに苦戦していた時期に、
全てのリソースを1つの事業に集中させ、
やっとの思いで成長軌道に乗せたという話を聞いた。
その時、鉢嶺さんの言葉が、鋭い棘のように僕の胸に突き刺さった。
「集中することで初めて、事業は伸びる。
分散していたら、どれも中途半端になってしまう。」
その瞬間、思わず頭の中で、自分の選択を振り返った。
実はちょうどその頃、僕は自社の事業を4つに分ける決断をしたばかりだった。
Web制作を中心にしていた事業から、
Webマーケティング、Webシステム開発、採用支援と、
それぞれの事業部を立ち上げ、全く新しい体制を整えようとしていたのだ。
「このままでいいのか?」
「ひとつの事業に集中した方が良いのでは?」
鉢嶺さんの講演後、僕はすぐに彼のところへ向かい、
今の戦略について率直に意見を求めた。
「僕たちは4つの事業に分けようとしています。
これが正しい選択なのか、鉢嶺さんならどう思いますか?」
少しイラっとしたような雰囲気を感じた。
そして彼は、僕の目をまっすぐ見てこう言った。
「ウチの小さい版だね。」
一瞬間を置いて、彼は僕の目を覗き込むようにして言った。
「どこに強みがあるの?」
そう言われて、
「マーケティングとクリエイティブの掛け算で、課題解決できるところです」
そう答えた。
「そんなのどこにもあるよ」
顔が青ざめていくのを感じた。
僕は食い下がった。
「鉢嶺さんは、どういう企業に魅力を感じますか?」
そう聞くと
「業種に特化しているとか、この分野だったら負けないとかあると魅力的に見える」
という答えをもらうことができた。
僕が4つの事業に分けたのには理由がある。
一つは専門性を高めたいと思ったからだ。
オールマイティーにWeb制作をやっていると、色々な知識が必要になる。
それでは成長スピードも上がらないし、知識も浅く広くになってしまう。
ITが進化している今、どれだけ深く知識を持っているかが大事。
だから知識と仕事の範囲を限定したかった。
もう一つは、若手に活躍の場を作ること。
一つの事業になると、どうしてもポストが限られてくる。
だから、なかなか若手が活躍できる環境を用意できない。
若手の成長には、失敗と成功の両方が必要だ。
新規の訪問を一人で行かせたり、
新しいプロダクトの導入に参加してもらったり、
システム案件のSEを担当させたりと、
失敗することも折り込み済みでいろんな体験をさせる1年にしたかった。
去年の10月、税理士さんとの面談で、
いい人がいたら積極的に採用していくから、
今期は投資の年だと伝えた。
「売上はおそらく追いつかないから赤字になる可能性がある」
そう伝えると、税理士さんは言った。
「秋葉さんは調整能力が高いから、なんだかんだいって黒字に持ってくるタイプ。でも今期はそれをしないということですね」
「はい、そのつもりです。大きなマイナスになるかもしれませんが・・・」
「そしたら赤字をじっくりと味わってください。そうすれば、次の打ち手が見えてきますから」
「赤字をじっくり味わう・・・」
その言葉が、まるで苦い薬を飲むように、心の中にじわじわと染み込んだ。
ダメな経営者のイメージが浮かぶ。
鼓動が少し早くなるのを感じだ。
しかし、未来を考えると必要な決断であることは確かだ。
「赤字、甘んじて受け入れようではないか」
この決断をすることがどれほど怖かったかことか・・・
赤字を受け入れる覚悟した上で、僕がチャレンジしたことは、
自分で数字を作らないことだった。
今までは営業マインドが強く、数字が伸びない時、力技で伸ばそうとしていた。
それでは会社の成長は頭打ちになる。
僕は支援する側に回って、直接的な営業はやらないようにした。
「俺が頑張らないと、会社の数字は伸びない」
ずっと、そう思い込んでいた。
この固定概念をぶっ壊したかったのだ。
実際に進めてみると、最初数字の伸びは弱かった。
事業部を分けたことで力が分散したことが原因だ。
そして現場も混乱している感じがあった。
最初の3ヶ月間は、組織全体にピリピリした空気が漂っていた。
スタッフたちは新しい体制に戸惑いながらも、
なんとか馴染もうと必死だった。
6ヶ月目からは、事業部を跨いで所属していた人を専属に変更した。
1年経った今では、事業部を分けたことに対する違和感も感じていないようだった。
分けたことのメリットも徐々に出てきた。
9月で20期が終わった。
実際の業績は、売上・利益ともに過去最高になったが、人材への投資が多く、赤字で着地した。
実際、スタッフは10人増えましたからね。
この赤字を、これからじっくりと味わおうと思います。
一方で、Web事業に集中するために、カレンダー事業を売却した。
おかげで赤字幅を大きく減らすことができた。
(カレンダーくん、ありがとう!)
僕の考えでは、最初の1〜2年は事業部を分けて専門性を高める方向で進むが、
それからは、一つのプロダクトに特化したチームで動くことを考えている。
鉢嶺さんからアドバイスもらった通り、やはり僕らの規模の会社では何かに特化した方が勝負になる。
当社の特徴として、新卒採用を12年行っていること、外国人スタッフが多いことが挙げられるので、このあたりをプロダクトにできれば面白いのではないかと思っている。
10月から新しい期が始まりました。
今期のテーマは『成長の兆しをつくる』としました。
去年、僕たちは新しい種をまき、その種が今少しずつ芽を出そうとしています。
今期は、その芽をしっかり育て、大きな木に育てていく年です。
『成長の兆しを作る』ということは、
売上を伸ばすことだけではありません。
若いスタッフと外国人スタッフが活躍する組織をつくること。
今、僕が情熱を注いでいることの一つです。
創業時はメラメラとした炎のような熱量でした。
今はジワーっとした地熱のような熱量を感じています。
焦らず、急ぎ足で進めていきます。
楽しみな1年のはじまりです。
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今週も「週刊秋葉塾」を読んでいただき、ありがとうございます。
2025年3月15日で丸20年となります。
来年は20周年イベントも企画していますので
楽しみにしていてください!!
久兵衛きちゃうかもね。
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