稲盛さんとの思い出

思い出ってタイトルにしましたが、稲盛さんとの直接的な思い出はありません。
経営問答をしたことも、直接お話ししたこともない。
それでも思い出として書いてみようと思った。

稲盛さんに出会ったのは今から7年前くらいになるかな。
経営者仲間に盛和塾に入会しないかって誘われたのがきっかけ。
経営破綻したJALを再生されてひと段落ついた時だったと記憶しています。
盛和塾のことは知っていましたが、
ちょっと真面目な集まりというイメージがあって敬遠していました。
当時はあまり乗り気ではなかったんだけど、
「ま、1年やってみようかな」っていう軽い気分で入会を決めました。
そんなんだから毎週開催される勉強会はサボり気味。
月に1回くらいしか参加していなかったような気がします。

入会してから半年くらい経った時だったと思います。
横浜で盛和塾の世界大会が開催されました。
塾生1万人くらいが集まる盛和塾最大のイベント。海外の塾生まで参加します。
世界大会は全国にある支部から選ばれた優秀な企業が、
自社の取り組みを発表する場です。
8人の発表者が一人ずつ、会社の成り立ち、苦労したこと、盛和塾での学びの実践、経営の数字を発表していきます。
最初あまり期待しないで聞いていたのですが、
一人目、二人目と話を聞いていくうちにのめり込んでいきます。
どの企業も、経常利益10％とか20％は当たり前。
10％とか無理って思っていた僕の頭は一気に崩壊します。
嘘だろ！
正直そう思いました。

稲盛さんは「フィロソフィ」を大切にして経営していました。
フィロソフィとは経営哲学のこと
その中心にあるのが京セラの経営理念。
京セラの経営理念にはこう書かれています。

後半に“ある人類、社会の進歩に貢献する“というのは、
社会的な体裁を取るために後づけでつけたとおっしゃっていました。

稲盛さんが一番大切にしていたことは、従業員の幸せを第一に経営するということ。
これを聞いた時は本当に驚きました。
こんなにストレートに従業員の幸せが一番だっていう経営者は今までいませんでしたから。
会社って経営側と労働者側という関係でなりたっている。
お金を提供する代わりに労働を提供するというのが普通の考え方。
そう教わってきましたから。

従業員ファーストにして企業は成り立つのか？
僕は疑問でした。
以前「ワイキューブ」という会社ありました。
中小企業なのに就職ランキングで上位にくる人気企業。
素敵なオフィス、バーやラウンジもあり、給料も高い従業員ファーストの会社です。
それが2011年に倒産します。
給料と福利厚生費がかさんで大赤字になったのが原因でした。
これを知っていたから「無理でしょ」って思ってたんです。

しかし、世界大会で発表する人たちは従業員をとても大切にしていた。
それでいて、利益体質の会社に生まれ変わっていた。
業界的には一桁が精一杯と言われている企業でさえ。

世界大会のあと、稲盛イズムをやってみようと思った。
まずはじめに、経営理念を変えた。

こんなことして何がかわるのだろうか？
最初は半信半疑だった。
それが1年経ち2年経ってくると、なんだか馴染んでくる。

稲盛さんから学んだことは従業員を大切にして、かつ利益体質の企業にすること。
相反する考えだと思っていたことが、6年の歳月でやっと融合してきているように思う。
その証拠にちゃんと利益が残れるようになってますし（10％はまだですが）、いい人材も揃ってきています。

2022年8月24日。稲盛さんは老衰でお亡くなりになりました。
晩年は体調が悪い中でも塾生のために、会に顔をだしてくれたり、メッセージを送ってくださいました。最後まで経営者の私たちを気にかけてくれました。
稲盛イズムはこれからもずっと学んでいきます。
本を読むのもいいんですが、あの淡々とした口調の音声も好き。
土に水が染み込むようにジワーと心の奥に染み込んでくる。
あの感じがたまらなくいいんです。

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今週も週刊秋葉塾をお読みいただきましてありがとうございました。
はじめて参加した世界大会で偶然稲盛さんとすれ違いました。
思わず握手をもとめたら、こころよく応えてくれました。
やわらかくて、あたたかくて、そして透き通った感触がしました。
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